大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和30年(け)28号 決定

而して刑事訴訟法第四三三条によれば、高等裁判所の決定に対しては同法第四〇五条に規定する事由がある場合にのみ即ち原決定が一、憲法に違反すること又は憲法の解釈に誤があること、二、最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと、三、最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又は刑事訴訟法施行後の控訴裁判所である高等裁判所の判例と相反する判断をしたことを理由とする場合のみに最高裁判所に特別抗告ができるのであるが、右上告趣意と題する書面を検討しても右に該当する主張は何等存在せず、只原裁判が失当であることを主張するのみである。よつて原決定に対する異議の申立と解して判断するに、刑事訴訟法第四二八条第二項に所謂高等裁判所の為した決定に対する異議申立というのは、同条第一項、同法第四一九条、第四二〇条、及び第四二八条第二項、第三項の規定を夫々対照考察するときは、高等裁判所が、第一次的に、為した決定に対してのみ為しうるものと解せられ、本件の如く高等裁判所が、抗告審として第二次的に為した決定に対しては更に異議の申立は為し得ないものと解せられるのである。しからば、本件異議の申立は抗告の手続の規定に違反する不適法な申立と云わなければならない。

尚仮に本件異議の申立は適法なりと解釈しても、元来刑事訴訟法第二六二条によつて審判の請求ができる場合は刑法第一九三条乃至第一九六条又は破壊活動防止法第四五条の罪について告訴告発をした者が検察官の公訴を提起しない処分に不服がある場合に限られているのであるところ本件は単に一私人に対する窃盗の罪であつて、右法条所定の罪に該当しない罪について告訴したにすぎないのであるから所謂審判請求をすることは全くできない場合なのである。原決定は正当である。

(久礼田 武田 石井文)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!